【感想】「永遠の日本美術の名宝」展の鑑賞で日本文化の奥深さを体感

感想_THIS IS JAPAN IN TOKYO_永遠の日本美術の名宝展から日本文化の奥深さを考える 美術館・博物館

今回は、東京富士美術館で開催中の特別展「THIS IS JAPAN IN TOKYO 〜永遠の日本美術の名宝〜」の感想や楽しみ方についてご紹介していきます。

はじめに

この特別展では、水墨画や金屏風、浮世絵、蒔絵、刀剣など、東京富士美術館が所蔵する約 90 点の名品を鑑賞できます。
また、「キモカワ」「サムライ」「デザイン」「黄金」「四季」「富士山」という6つのキーワードから、日本文化の奥深さについても探求できる仕掛けになっています。

6つのキーワードと日本美術の名品の組み合わせは、あらためて「日本らしさ」を考えるきっかけになります。

「THIS IS JAPAN」展の見どころ

特別展「THIS IS JAPAN IN TOKYO 〜永遠の日本美術の名宝〜」では、

  • 伊藤若冲や円山応挙らの絵画
  • 葛飾北斎や歌川広重らの浮世絵版画
  • 狩野派や琳派などの障壁画
  • 横山大観や鏑木清方らの日本画、
  • 篤姫の婚礼調度品などの漆工芸品
  • 島津斉彬所用の甲冑や刀剣

など、バラエティーに富んだ名品が鑑賞できます。

どれも素晴らしい作品でしたが、この記事では次の3点をご紹介していきます。

  • 狩野常信《四季山水図屏風》
  • 順姫所用《竹雀紋竪三引両紋牡丹唐草蒔絵女乗物》
  • 岩佐派《源氏物語図屏風》

水墨と金砂子の組み合わせが印象的な狩野常信《四季山水図屏風》

富士美_狩野常信_四季山水図屏風

狩野常信《四季山水図屏風》

1つめは、狩野常信の《四季山水図屏風》です。

この作品は、季節の移り変わりをを描いています。
この作品で印象深いのは、水墨に金箔を粉末にした金砂子(きんすなご)をまぶしているところです。

金屏風の豪華さと水墨の渋さの両方の特徴を持つ水墨山水図になってます。
常信は、江戸狩野派の祖である狩野探幽の後継者なので、余白と安定した構図も特徴的です。

安土桃山時代の作品に見られる力強い作風とは、対照的な雰囲気を楽しむことができます。
同じ会場で展示されている狩野派の《洛中洛外図屏風》などの金屏風と比較して楽しむこともできます。

江戸時代のロールス・ロイス《竹雀紋竪三引両紋牡丹唐草蒔絵女乗物》

富士美_竹雀紋竪三引両紋牡丹唐草蒔絵女乗物

《竹雀紋竪三引両紋牡丹唐草蒔絵女乗物》

2つめの《竹雀紋竪三引両紋牡丹唐草蒔絵女乗物》は、仙台藩の藩主伊達重村の娘順姫が、宇和島藩主へ嫁いだ時に使用されたと伝わる乗物です。

(文房具や食器でなく)大きな乗物の外装に施された蒔絵と内装に描かれている花鳥画の豪華絢爛さは圧巻です。

ちなみに、引戸になっている駕籠(かご)は高級品の扱いで、乗物(のりもの)と分類されています。
江戸時代は、特別な身分の人しか利用できない決まりになっていました。

同じ会場で展示されている蒔絵

  • 天祥院篤姫の婚礼調度品の《葵紋牡丹紋二葉葵唐草蒔絵茶碗台 同蓋》
  • 五十嵐派の《鹿秋草蒔絵硯箱》

なども楽しめます。

単眼鏡を使うと、細密で豪華な蒔絵のすばらしさと技のスゴさを、さらに楽しむことができます。

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実はドラマチックな仕掛けの《源氏物語図屏風》

富士美_灯明鑑賞体験装置_源氏物語図屛風3つめは、岩佐派の《源氏物語図屏風》です。
これは、12の源氏物語の場面を描いた作品で、「源氏絵」とよばれています。

この作品は、展示上の工夫に興味を持ちました。

IT技術を使って、灯明の光で「源氏絵」を鑑賞する体験ができる装置もあります。
この装置は、手を動かすとセンサーが反応して、灯明の光の届く範囲が画面上で再現されます。

光の届く範囲は限られているので、名場面を1つずつ鑑賞していく様子が伺えます。
金箔が反射する「ゆらゆら感」も、画面から伝わってきます。

源氏物語の場面が1つずつ登場するのはドラマチックです。
一度に12場面を俯瞰する実物の鑑賞と比較すると、興味深い体験ができます。

同じ会場で展示されている《源氏物語(車争)図屏風》と比較して楽しむこともできます。

源氏物語の全体像と大まかな概要を手早くつかめるおすすめ本と動画

「漆」も日本らしさを感じるキーワードに

この特別展は、「キモカワ」「サムライ」「デザイン」「黄金」「四季」「富士山」の6つがキーワードです。

鑑賞後のわたくしの心の中を占めていたのは、「デザイン」「黄金」でした。
もう1つは、キーワードにはなかった「漆」でした。

蒔絵に見る高度な技術と芸術性

私自身は、漆の工芸品に「日本らしさ」を感じることが多かったです。
さきほどご紹介した蒔絵の細かい図柄や模様からは、職人の高い技術と丁寧な仕事ぶりがうかがえます。
それは、刀剣や浮世絵などからも伝わってきます。この日の鑑賞では、漆の工芸品から強く感じました。

琳派にみるデザイン性

また会場では、琳派の作品が多く展示されていたのが印象的でした。
例えば、鈴木其一の《風神雷神図襖》や《萩月図襖》などの作品が展示されています。

デフォルメした造形と色彩感覚は、現在に通じるものを感じます。

絵画や彫刻と工芸が一体となっているところが、日本美術が持っている魅力の一部であるようにも感じました。

「日本らしさ」を考える展覧会

残りのキーワードの「キモカワ」「サムライ」「四季」「富士山」からも日本らしさを読み解くことができると思います。

例えば、富士山は、古来から日本人の信仰や芸術に大きな影響を与えています。

葛飾北斎の「冨嶽三十六景」を始めとする富士山をモチーフする作品が多く制作されています。

また富士山といえば、その姿が絶えず変化するところも特徴の1つです。

吉田博の木版画からは、そのような自然の変化を捉えつつ、富士山を始めとする自然への尊敬の念が伝わってきます。(後期は、川瀬巴水の表現を楽しむことができます。)

このように、特別展「THIS IS JAPAN IN TOKYO 〜永遠の日本美術の名宝〜」では、6つのキーワードをヒントにして、さまざまな角度で「日本らしさ」発見の旅が楽しめます。

この記事が、皆様の参考になれば幸いです。

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