この記事では、サントリー美術館の特別展「日本美術の裏の裏」の感想や楽しみ方についてご紹介していきます。
この特別展では、サントリー美術館が所蔵する絵画、陶磁、漆工などの名品約70点(前後期)を鑑賞できます。
日本美術を楽しむために、「空間」「小(small)」「心」「景色」「和歌」「風景」という6つのキーワードが用意されています。
結論から言うと、想像していた内容とは全く違っていました。
何か特別なテクニックがあることを期待すると、がっかりするかもしれません。
その代わり、日本文化の柔軟性や「ゆるさ」を楽しむには最適な展覧会です。
この記事では、「日本美術の裏の裏」展をどのように楽しんだを、一般の愛好家の視点でお伝えしていきたいと思います。
はじめに
「裏の裏」という表現からは、「マニアック」な印象を受けます。
「日本美術の裏の裏」の「裏の裏」とは何だろう?
とお思いの方もいるかと思います。
「日本美術の裏の裏」では、屏風絵から、お伽草子の絵巻、浮世絵、やきものなどを駆使して、「裏の裏」に迫っているようです。
「裏の裏」が気になりつつも、用意された6つのキーワード(「空間」「小(small)」「心」「景色」「和歌」「風景」)をガイドに、鑑賞を楽しみました。
生活空間と没入感を感じる
はじめは、「空間をつくる」というセクションです。
最初に、円山応挙の「青楓瀑布図」がお出迎えをします。
作品に出会うまでの演出がされています。
ぜひ空間や没入感をお楽しみください。
その後は、襖を意識した展示室に入ります。
屏風の画題にも注目です。
季節感を感じることができます。
2つは「小をめでる」というセクションです。
ここでは、文房具や食器、化粧道具などのミニチュア作品を楽しめます。
小さいのに精巧な漆工作品が印象的です。
単眼鏡を使うと、ミニチュアなのにきちんと作り込んた技のスゴさを、さらに楽しむことができます。
お伽草子の絵巻に心をゆるめる
3つめのセクションは、「心でえがく」です。
お伽草子絵巻の「かるかや」と「鼠草子絵巻」は、最大の見どころです。
特に、「かるかた」は大部分の場面を鑑賞することができます。
「かるかた」ファンの方、必見です。
「かるかた」は、親子の悲しい物語です。
悲しい話のはずなのに、「へたうま」な絵画が、心を癒やします。
「鼠草子絵巻」は、ねずみとお姫様の切ない物語です。
主人公のねずみは、擬人化して描かれています。
動物が主人公として擬人化されるのも、お伽草子の特徴の1つです。
公共マナー啓発のポスターなどで、擬人化した動物を目にすることがあります。
動物の擬人化表現は、当時の伝統が今に引き継がれているのかもしれませんね。
柔軟性を楽しむ
4つめのセクションは、「景色をさがす」です。
左右非対称な陶磁がみせる個性を楽しむことができます。
焼き加減や釉薬の偶然性が印象的です。
さまざまな方向から好きな表情を探し出すことができます。
5つめのセクションは、「和歌でわかる」です。
文字と絵画の共演によって創り出されるエレガントな美しさが印象的です。
俵屋宗達と本阿弥光悦の合作の作品は見どころの1つです。
前期は「柳下絵古今集和歌色紙」を楽しむことができました。
(後期は「蔦下絵新古今集和歌色紙」などが楽しめます。)
そして美しい料紙も印象的です。
登場人物になりきる
6つめは、「風景にはいる」というセクションです。
最初に、池大雅の「青緑山水画帖」を使って問いかけをしてきます。
この作品から、鑑賞者に「点景人物」(てんけいじんぶつ)という、視点を与えられます。
点景人物とは、風景画に小さく描かれた人物
画題の脇役として登場している小さな登場人物になったつもりで鑑賞するといろんなことが見えてくるようです。
池大雅の他には、住吉派「隅田川名所図巻」や歌川広重「東海道五十三次」を使って、絵画の世界と一体化する感覚を楽しむことができます。
このセクションの最後は、海北友雪の「徒然草絵巻」第五巻で締めくくります。
個人的には「徒然草絵巻」も、もう少し見たかったです。
さいごに – 心を伝える手段
ものすごい鑑賞テクニックが得られることを期待して、この展覧会を訪れました。
しかし、鑑賞後は、
「難しく考えずに、もっと表現してもいいんだよ」
というメッセージを受け取った気がしました。
それは、「かるかや」や「鼠草子絵巻」の素朴で穏やかな表現から「ほっとする」感覚や「癒やし」を感じたからだと思います。
また絵巻物は、4コマ漫画とは違う日本美術が持つユニークな世界観です。
「カクカク」でなくて、いつの間にか「スーッ」と川のように流れるような感じがします。
エリートから富裕層、庶民まで、それぞれの立場で表現方法は違えど、心を伝える方法の1つとして、思い思いに楽しんでいたのかなあと思いました。
そして、日本美術は
- 書と絵画が
- 工芸とデザイン
がクロスオーバーしているところも魅力的です。
しかし明治以後、芸術が細分化されたことによって、私たちが得たことと失ったものがあるのかもしれません。
この展覧会は、昔の日本人がかつて当たり前のように持っていた感性を取り戻す手がかりになるような気がしました。
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「日本美術」の参考記事とおすすめ本
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