【感想】「美を結ぶ。美をひらく。 美の交流が生んだ6つの物語」展で溶け合う文化を感じる

感想_美を結ぶ展で溶け合う文化を感じる 美術館・博物館

この記事では、サントリー美術館の「美を結ぶ。美をひらく。 美の交流が生んだ6つの物語」展の感想や楽しみ方についてご紹介していきます。

「美を結ぶ。美をひらく。 美の交流が生んだ6つの物語」展には、次のような物語が用意されています。

  • ヨーロッパも魅了された古伊万里
  • 将軍家への献上で研ぎ澄まされた鍋島
  • 東アジア文化が溶け込んだ琉球の紅型
  • 西洋への憧れが生んだ和ガラス
  • 東西文化が結びついた江戸・明治の浮世絵
  • 異文化を独自の表現に昇華したガレ

6つの物語は、時や時間を超えた美への憧れ、職人・アーティストのプライドや探究心とともに展開されていきます。

このように「美を結ぶ。美をひらく。 美の交流が生んだ6つの物語」展は、古今東西の文化が溶け合う様子を感じることができる展覧会です。

ここからは、一般の愛好家として「美を結ぶ。美をひらく。」展をどのように楽しんだをお伝えしていきます。

はじめに

「美を結ぶ。美をひらく。 美の交流が生んだ6つの物語」展は、17世紀から20世紀初頭を範囲にしたています。

このような方に特にオススメできる展覧会です。

楽しめる内容

  • 焼き物好き。古伊万里、鍋島焼を楽しめます。
  • 和ガラス好き。薩摩切子が特におすすめです。
  • 織物好き。紅型の裂地とレアな型紙も堪能できます。
  • エミール・ガレ好き。サントリー美術館の新収蔵品のお披露目です。

楽しみ方の一例

今回は、焼き物と和ガラスが登場する3つの物語

  • ヨーロッパも魅了された古伊万里
  • 将軍家への献上で研ぎ澄まされた鍋島
  • 西洋への憧れが生んだ和ガラス

を中心に、「美を結ぶ。美をひらく。 美の交流が生んだ6つの物語」展の楽しさや学びをお伝えしていきます。

古伊万里、鍋島に見る「やきもの」の美

「美を結ぶ。美をひらく。」展の物語は、輸出された古伊万里から始まります。
そのあとに、古伊万里から派生した鍋島焼へとつながっていきます。

国際ブランドになった古伊万里

最初にご紹介する「ヨーロッパも魅了された古伊万里」は、輸出用の古伊万里にまつわる物語です。

物語は、やきものの形や色絵の誕生と発展を、

  • 白い素地が優美な「柿右衛門様式」
  • 金彩の文様が施された華やかな「金襴手様式」

の名品を中心に展開されます。

伊万里焼は、現在の佐賀県有田町とその周辺で生産が始まった日本初の国産磁器です。

ヨーロッパでは、中国製の磁器が流行していましたが、中国王朝の動乱(明から清朝への移行)で、中国製の磁器が不足します。

伊万里焼に思いがけないチャンスが訪れます。
オランダ東インド会社が、伊万里焼を代替品として、大量に購入しました。

しかし、伊万里焼は代替品では終わりませんでした。
伊万里焼は、ヨーロッパの貴族を魅了し、国際ブランドへと躍進します。

このセクションで特に印象的な作品は、次の2つでした。

1つめは、柿右衛門様式の「色絵花卉文輪花鉢」です。
白い素地と色のコントラストが素敵で形もかわいらしいです。

2つめは、金襴手様式の「色絵五艘船文独楽形鉢」です。
こちらは、国内向けに生産された磁器だそうです。
「和洋中折衷」の意匠がユニークです。

プレッシャーに打ち克った鍋島焼

次にご紹介する「将軍家への献上で研ぎ澄まされた鍋島」は、鍋島焼にまつわる物語です。

鍋島焼は、伊万里焼の同じ有田の地で誕生した高級磁器です。
佐賀藩の厳しい管理下で、生産、品質管理、技術の秘密保持がされていきます。
主な用途は、将軍家への献上や贈答用です。

将軍家への献上は、徳川家光の最晩年の頃から始まったと伝わっています。

高品質で期待を超えた品々を献上するために、コスト度外視で超絶技巧を駆使し、「最高のやきもの」を追求していきます。
さらにまとまったセット物として献上するために、高いレベルでの品質管理も求められます。

毎年の将軍家への献上は、大変なプレッシャーになったようです。
プレッシャーとプライドは、新しい技と斬新なデザインを生み出します。

「美を結ぶ。美をひらく。 美の交流が生んだ6つの物語」展では、次の3つの視点から、鍋島焼の洗練された美しさの秘密に迫っています。

  • 構図
  • 青の表現力
  • 墨弾き(白抜き文様)

このコーナーで特に印象的な作品は、次の2つでした。
両方とも、丸い画面に上品な文様を描くための構図、「墨弾き」と呼ばれる白抜き文様をつくる染付の技術によって生産された名品です。

1つめは、「染付松樹文三脚大皿」は、図案化された構図のセンスが魅力的です。
2つめは、「染付雲雷文大皿」は、中心が発光しているようなデザインが印象的です。

鍋島焼にまつわる物語は、献上品であるがゆえの「制約条件」を乗り越え、素晴らしい作品を供給しつづけた歴史でもあります。

プライドをかけた薩摩切子の生産

最後にご紹介する「西洋への憧れが生んだ和ガラス」は、近世の日本人がガラスの生産技術を習得し、「切子」と呼ばれる独自の「カットグラス」を生み出す物語です。

切子には、「江戸切子」と「薩摩切子」があります。
(当時の)「江戸切子」は、無色透明が特徴です。
「薩摩切子」は、無色透明のガラスに、色ガラスを被せ、「ぼかし」によるカラーグラデーションが特徴です。

今回は、薩摩藩が威信をかけて生産した「薩摩切子」について、ご紹介していきます。

16世紀中頃に、ヨーロッパ製のガラスがもたらされ、18世紀には国産のガラス器が流通します。
しかし、切子が生産できるようになったのは、19世紀になってからです。

それは、切子を製造するためには、無色透明で厚いガラスが必要だったためです。
その生産技術は、蘭学書の翻訳などの苦労を重ねて習得したようです。

薩摩切子の生産は、近代化の一環として島津斉彬を中心に推進されました。
薩摩切子は、贈答品として用いられたので、コストを度外視し、最高品質を追求します。

贈答品として評判を得た薩摩切子には、薩英戦争(1863年)という運命が待ち構えていました。
イギリス海軍の鹿児島攻撃で、製造工場が被災します。

それをきっかけに、薩摩切子の生産は、開始からわずか30年ほどで途絶えてしまいます。

数奇な運命をたどった薩摩切子ですが、この展示では素晴らしい薩摩切子の作品を見ることができます。
その中でも、最も印象的な作品は、「藍色被船形鉢」です。

青い色ガラスに彫られた個性的な文様とシャープなカットが印象的です。
和ガラスとシャープなカットがもたらす、キラキラとした輝きに感動しました。

ちなみに、明治時代初頭に途絶えた薩摩切子は、100年の時を経て、薩摩切子の生産技術が復元され、復活を遂げることになります。

さいごに – 心を伝える手段

今回の記事では、「美を結ぶ。美をひらく。 美の交流が生んだ6つの物語」展のみどころを、主に「やきもの」と「和ガラス」の物語からご紹介しました。

「美を結ぶ。美をひらく。 美の交流が生んだ6つの物語」展では、

  • 美しいものやカッコいいものへの憧れが、時間を場所を超えて人々をつないでいく
  • 作品への想いやプライドは、作品をより美しく洗練させていく

ストーリーに感銘を受けました。

「やきもの」と「和ガラス」の他にも、今回ご紹介できなかった紅型や浮世絵、ガレの作品からも、古今東西の文化が融合し、生み出された新たな作品に素晴らしさを感じることができます。

この記事が、皆様の参考になれば幸いです。