【感想】特別展「聖徳太子と法隆寺」和の精神の源流を求めて

感想、特別展聖徳太子と法隆寺。和の精神の源流を求め 美術館・博物館

この記事では、特別展「聖徳太子と法隆寺」の感想と楽しみ方の一例、予習・復習に役立つコンテンツについてご紹介していきます。

はじめに

聖徳太子は、仏教を広め、十七条憲法を制定した人物として知られています。
聖徳太子が願った「和」の精神は、日本人の価値観の源流でもあります。
それは奥深いテーマで、多くの人々を惹きつけてきました。

一方で聖徳太子は、没後まもなく聖人化されて、信仰の対象になったという一面も持っています。

メインテーマは「太子信仰」

特別展「聖徳太子と法隆寺展」は、聖徳太子への信仰である「太子信仰」をメインテーマとした展覧会です。

展示は、次のような5部構成になっています。

  • 聖徳太子と仏法興隆
  • 法隆寺の創建
  • 聖徳太子と仏の姿
  • 法隆寺東院とその宝物
  • 法隆寺金堂と五重塔

歴史ファンの方は、聖徳太子や法隆寺の本によく登場する実物の史資料を見て、わくわくすると思います。
日本美術ファンの方は、飛鳥時代から鎌倉時代の仏教美術を中心にを楽しむことができます。

特別展「聖徳太子と法隆寺展」は、歴史ファンと日本美術ファンにおすすめできる展覧会です。

こちらの雑誌では、特別展「聖徳太子と法隆寺展」を特集しています。
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聖徳太子生前の業績

第1章の「聖徳太子と仏法興隆」では、聖徳太子自身に焦点を当てています。
聖徳太子のイメージからはじまり、生前の業績、聖徳太子ゆかりの遺品などが展示されています。

聖徳太子のイメージ

最初に目にするのは、2つの聖徳太子のイメージです。
1つめは《如意輪観音菩薩半跏像》という平安時代に制作された仏像です。

平安時代は、聖徳太子が観音の化身として考えられていました。当時の人々の太子像だったかもしれません。

2つめは、《聖徳太子二王子像(模本)》です。
私達がよく目にする聖徳太子のイメージです。

こちらのほうが親近感を感じるかもしれません。

聖徳太子自筆と伝えられる「法華義疏」

《御物 法華義疏(法隆寺献納)》は、聖徳太子著作の注釈書といわれています。

さらに「法華義疏」は聖徳太子自筆とも伝えられ、大切に代々受け継がれてきました。

《御物 法華義疏(法隆寺献納)》は、推敲の形跡があることに注目です。
推敲を重ねて、推古天皇への講義に臨んだのかもしれません。

聖徳太子の棺?

聖徳太子が使用したと伝えられる筆記用具も展示されています。
しかし目に留まったのは、べつのものでした。

それは《夾紵棺断片》(きょうちょかんだんぺん)とよばれる棺の断片です。

《夾紵棺断片》は45層の絹を漆で固めた当時最高級の棺です。
この棺に、聖徳太子がおさめられていた可能性があるということです。
研究の進展が楽しみです。

法隆寺の創建

第2章の「法隆寺の創建」は、聖徳太子が創建した若草伽藍跡と、再建された西院伽藍にスポットを当てた展示です。

聖徳太子への想いを感じる「天寿国繡帳」

《天寿国繡帳》(てんじゅこくしゅうちょう)(前期展示のみ)は、日本最古の刺しゅうです。

《天寿国繡帳》は、聖徳太子が浄土に旅立った様子が表現されています。
このため、聖徳太子の来世観を読み解く手がかりとなる資料でもあります。

個人的には、《天寿国繡帳》からは神秘性を感じるとともに、聖徳太子への想いを感じたのが印象的でした。

法隆寺ゆかりの史資料も

法隆寺にまつわる本を読むと必ず登場するのは、創建法隆寺の火災による焼失と再建です。

その中で出てくるのは、若草伽藍跡の発掘調査の成果です。
特別展「聖徳太子と法隆寺」では、重要な考古資料の瓦が展示されています。

また法隆寺の来歴を知るうえで重要な史料でもある《法隆寺伽藍縁起幷流記資財帳》の写本も展示されています。

実物の史資料を見ると、歴史ロマンを感じてテンションが上がりました。

信仰の対象となった聖徳太子

聖徳太子没後まもなく聖人化され、奈良時代には信仰の対象になります。
「太子信仰」は、平安時代中期には全国規模に拡大し、鎌倉時代には最高潮を迎えます。

第3章の「聖徳太子と仏の姿」では、聖徳太子が宗派を超えた存在になる様子がわかります。

第4章の「法隆寺東院とその宝物」では、「太子信仰」の舞台である法隆寺東院の雰囲気が味わえます。

さまざまな太子像

第3章の「聖徳太子と仏の姿」の展示会場では、さまざまな聖徳太子像や肖像画を鑑賞することができます。

特に印象深かったのは、3種類の聖徳太子立像でした。

1つめは、《聖徳太子立像(二歳像)》です。
幼児が上半身裸で合唱する姿を表現したで、利発な表情が印象的です。
聖徳太子が2歳のときに「南無仏」と称えた説話が基になっています。

2つめは、《聖徳太子立像(孝養像)》です。
16歳の聖徳太子を表現した像で、凛々しい表情が印象的です。
聖徳太子が16歳のとき、父である用明天皇の病気回復を祈願した説話が基になっています。

3つめは、《聖徳太子および侍者像》です。
7年ぶりに寺外で公開される聖霊院の秘仏で、聖徳太子と太子にゆかりのある4人の像です。

侍者たちはユーモラスな表情をしているのに、聖徳太子だけが威厳を感じる表情を見せているところが印象的です。

宗派を超えた太子信仰

太子信仰の広がりを示すもう1つのユニークな展示があります。

真言密教のシンボルともいえる曼荼羅です。

空海が聖徳太子の生まれ変わりだったいう説が、平安時代の末期から広がるようになりました。

曼荼羅は、聖徳太子が宗派を超えた存在になったシンボルの1つともいえます。

法隆寺での太子信仰

法隆寺における「太子信仰」の中心は東院です。
法隆寺東院伽藍の造営は、行信が深く関わっています。

第4章「法隆寺東院とその宝物」の展示会場に入って目にするのが、《行信僧都坐像》です。

行信は、聖霊会(しょうりょうえ)とよばれる聖徳太子を供養する法要を夢殿で始めた人物としても知られています。

聖霊会は、10年毎の節目の年には「大会式」(だいえしき)とよばれる大規模な法要が執り行われます。

ここで印象に残ったのは、大会式をイメージした展示室です。

現在も「大会式」に使われている御輿《舎利御輿》が、会場中央に展示されています。

その周りには、 輿を担ぐ人々が身につける「行道面」も展示されています。(前期のみ。後期は舞楽で使用される「舞楽面」が展示されます。)

人々の感情を直感的に伝える面と御輿の存在感は、「太子信仰」の雰囲気をさらに感じる事ができます。

法隆寺金堂と五重塔

法隆寺と聞いて最初にイメージするのは、西院伽藍の金堂と五重塔です。

最終章では、法隆寺金堂と五重塔におさめられた仏像」では、美しい仏様を鑑賞できます。

ここでは2つご紹介します。

ミステリアスな《薬師如来坐像》

《薬師如来坐像》は飛鳥時代を代表する作品として知られています。

ミステリアスなアルカイック・スマイルが印象的です。
着衣の模様と手も印象的です。

実はもう1つミステリアスなものがあります。
光背背面の銘文です。

光背背面の銘文は、法隆寺創建の手がかりになる文言が刻まれています。
しかし、この銘文も謎に包まれています。

美しい《伝橘夫人念持仏厨子》

《伝橘夫人念持仏厨子》は、白鳳時代を代表する作品の1つとして知られています。

特別展「聖徳太子と法隆寺」では、最後を飾る作品として、阿弥陀三尊像と厨子が別々に展示されています。

シャープな《薬師如来坐像》とは対象的に、阿弥陀三尊像は、丸みを帯びて柔らかい造形と優しい表情が印象的です。

おわりに

特別展「聖徳太子と法隆寺」は、聖徳太子が亡くなってから1400年目の節目の「御遠忌」(ごおんき)を記念して開催された展覧会です。

この展覧会では、

  • 仏教をよりどころとした聖徳太子
  • 聖徳太子が理想とした「和」の精神
  • 聖徳太子に共感した後世の人々の宗派を超えた想いが生んだ「太子信仰」

について、貴重な史資料を通じて知ることができます。

歴史ファンの方にも仏教美術のファンの方にも、楽しむことができる展覧会です。

聖徳太子と法隆寺についてさらに知りたい方へ

聖徳太子の業績や法隆寺の来歴などは、現存する史資料の解釈によって、さまざまな見解や学説があります。
こちらの本は、特別展「聖徳太子と法隆寺」の理解を深め、予習・復習にも最適な一冊です。

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この記事が、皆様のお役に立てれば幸いです。

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