【感想】特別展「モディリアーニ ―愛と創作に捧げた35年―」唯一無二の人物表現

美術館・博物館

この記事では、大阪中之島美術館で開催中の特別展「モディリアーニ ―愛と創作に捧げた35年―」の感想と、楽しみ方の一例、予習・復習に役立つコンテンツについてご紹介していきます。

はじめに

アメデオ・モディリアーニは、イタリア出身でエコール・ド・パリを代表する画家の1人です。
モディリアーニと聞くと、アーモンド型の瞳や細長い首を思い浮かべる方もいるかもしれません。

特別展「モディリアーニ ―愛と創作に捧げた35年―」は、モディリアーニの作品を日本でまとまった形で鑑賞できる2008年以来14年ぶりの展覧会です。

そして展覧会のサブタイトルには

愛と創作に捧げた35年

とあり、展覧会のチラシには

描いたのは愛

とあるではありませんか。
ココロが惹きつけられるコピーから情熱的な雰囲気を感じるかもしれません。

モディリアーニ ―愛と創作に捧げた35年―」展は、次のような3部構成でモディリアーニの芸術に迫っていきます。

  • 第1章 芸術家への道
  • 第2章 1910年代パリの美術
  • 第3章 モディリアーニ芸術の真骨頂 肖像画とヌード

ここからは、一般の愛好家として「モディリアーニ ―愛と創作に捧げた35年―」展をどのように楽しんだか、主観的な見どころや感想を中心にお伝えしていきます。

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初期作品にみるモディリアーニの原点

20世紀初頭にパリに渡ったモディリアーニは、第一次世界大戦前のフランス・パリの繁栄の中でどのような作品を残したのでしょうか?

キュビスムやフォーヴィスム、アフリカ美術の作品が、モディリアーニに影響を与えたことがわかる展示になっています。

その中でもブランクーシの《接吻》と《眠れるミューズ》いう作品が印象に残りました。
単純化の中に調和と生命力を感じる作品です。

モディリアーニの《カリアティード》は、土偶など縄文時代の美にある原始芸術のもつ根源的な生命力を感じることができます。
カリアティードは西洋建築で女性をかたどった柱のことです。

さらに、この作品からは後の肖像画に通じる表現を感じることができます。

エコール・ド・パリとモディリアーニゆかりの人物

第2章の「1910年代パリの美術」では、モディリアーニにゆかりのある人物との比較でモディリアーニの個性を感じることができます。

モディリアーニの人物相関図を示した解説パネルがあります。
その中で興味深かったのは、ユトリロが飲み友達だったこと、キスリングはモディリアーニの死後にお葬式を出したことでした。

ここでは興味深かった作品を3点ご紹介していきます。

最初は、キスリングの妻であるルネを描いた作品2点です。
キスリングの《ルネ・キスリング夫人の肖像》とモディリアーニの《ルネ》です。

キスリングの作品は、明るく華やかで透明感のある色彩の中に繊細なタッチで女性らしさを感じるキスリングらしい作品です。
その一方でモディリアーニの作品は、青いシャツとネクタイに身を包んだルネが描かれており、男性的な要素が表に出ています。
2つの作品を見比べると2人の個性をさらに感じることができます。

次に、モディリアーニの自画像を描いた《ピエロに扮した自画像》というタイトルの作品です。
顔と首すじに青みがかった着色がされているのが目に飛び込みます。
そして左目も同じ色で塗りつぶされ、右の瞳だけが空いています。
この作品から、モディリアーニの繊細さを感じることができるかもしれません。

モディリアーニの世界観を表現された肖像画とヌード

第3章の「モディリアーニ芸術の真骨頂 肖像画とヌード」では、大阪中之島美術館を代表する所蔵品の《髪をほどいた横たわる裸婦》を中心に、モディリアーニの画業の集大成ともいえる作品を見ることができます。

同じモデルを描いた裸婦像

最初は、この展覧会最大のみどころの2点の裸婦像です。
同一人物を描いた裸婦が2点並んで展示されております。

1点めは、アントワープ王立美術館が所蔵する《座る裸婦》です。
2点めは、大阪中之島美術館が所蔵する《髪をほどいた横たわる裸婦》です。

《座る裸婦》は縦の構図で描かれており、《髪をほどいた横たわる裸婦》はルネサンス以来の伝統の構図で描かれております。
《座る裸婦》はモデルの流し目が、《髪をほどいた横たわる裸婦》はこちらを見つめるような眼差しが印象的です。

両方の作品ともに濃茶色の壁を背景から肌色のモデルを引き立たせており、特に《髪をほどいた横たわる裸婦》の明るい肌色は、観るものに強い印象を与えます。

恋人ジャンヌ・エビュテルヌから投影した理想像

次は、モディリアーニの恋人ジャンヌ・エビュテルヌを描いた2点です。

1点めは、《大きな帽子をかぶったジャンヌ・エビュテルヌ》です。
2点めは、《ジャンヌ・エビュテルヌの肖像》です。

両方の作品ともに、モディリアーニのトレードマークである「アーモンド型の瞳」と「細長い首」で描かれております。
中間色で描かれたジャンヌからは穏やかな雰囲気を感じます。

こちらを読むと、モディリアーニとジャンヌの恋についても知ることができます。

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世界初公開の作品《少女の肖像》

最後は、世界初公開の作品《少女の肖像》です。
《少女の肖像》を最初に観た時、ルオーの作品が頭に浮かびました。
宗教画のような不思議な雰囲気を感じる作品です。

おわりに

今回の記事では、特別展「モディリアーニ ―愛と創作に捧げた35年―」は、オリジナリティと豊かな創造力を感じた作品を取り上げてみました。

青みを帯びたグレーや茶褐色の背景に同系色の衣服で描かれたのモデルの肖像画に魅力を感じることが多かったような気がします。

特別展「モディリアーニ ―愛と創作に捧げた35年―」では、モディリアーニがルネサンス以来の伝統を継承し、キュビスムやフォーヴィスム、アフリカ美術を様式化された作品へと昇華させていった様子を知ることができました。
またその中には、スピリチュアルな要素を含む作品があったことに驚きました。

そして、繊細でありながら情熱的な要素もあわせ持つモディリアーニの世界観を垣間見る思いでした。

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この記事が、皆様の参考になれば幸いです。