西洋絵画鑑賞のおすすめ本ー入門者が簡単・効率的に鑑賞眼を磨く手引きに

書評

はじめに

絵画や彫刻などの美術作品を鑑賞すると、作品の力だけで有無を言わせぬ「迫力」や「すごさ」を感じることがあります。

その一方で絵画鑑賞の「ルール」を知ると、更に楽しいのだろうなと思っていました。

例えば、柔道や茶道などの「型」や、将棋や囲碁、スポーツなどの「定石」や「戦術」、音楽理論の「和声」や「コード」といった「約束事」があります。

そのため、私は美術館を訪れると、音声ガイドを借りて「理論武装」を試みます。
音声ガイドは、展覧会のテーマや意図、出品作品の理解に役に立ちます。

しかし、それだけでは西洋絵画を理解するための「体系的」な知識を得るのは難しいです。

西洋絵画をさらに深いレベルで学びたいと思っている方は、数多くいらっしゃるので、絵画鑑賞や美術史に関する本は、多く出版されています。

また、ヨーロッパ旅行には、美術館はつきものです。
海外旅行の前に、美術館の予習をするのは楽しいひとときです。

近年は、ビジネスパーソンを中心に、教養や直感的で柔軟な発想力を高めるために、アートに興味を持つ方も増えています。

この記事では、これから西洋絵画を学ぶ人が、鑑賞に役立つ本を紹介していきます。

西洋絵画の見かたを知ることで、美術館で過ごす時間がもっと有意義で楽しいものになるはずです。

名画を「読み解く」手がかりを知るおすすめ5冊

西洋絵画を「読み解く」ためには、前提となる知識が必要不可欠だといわれています。

美術史や世界史などの背景知識とともに、西洋美術の流れや背景を分かりやすく解説した本を紹介します。

こちらの5冊になります。
『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた』
『西洋美術入門 絵画の見かた』
『武器になる知的教養 西洋美術鑑賞 』
『カラー版 – 近代絵画史(上) 増補版』
『カラー版 – 近代絵画史(下) 増補版』

『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた』

著者の池上英洋氏は、西洋美術史・文化史を専門とする研究者で、東京造形大学教授です。
特にイタリア文化の造詣が深いことで知られており、NHKラジオ講座でイタリア語の講師も担当されていました。

池上先生は、多くの絵画鑑賞の本を書いています。
この本では、名画の鑑賞のポイントを、画家の人生や人間模様、時代背景も交えて、難しい専門用語も含めてマンガとともに入門者向けにわかりやすく解説しています。

『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた』

初めて西洋絵画の本を読む方が、第一歩を踏み出すのに最適な1冊です。

『西洋美術入門 絵画の見かた』

こちらは『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた』と同じ池上英洋氏による本です。

『西洋美術入門 絵画の見かた』

こちらも豊富なイラストと図版で、鑑賞のポイントや絵画の背景にあるメッセージ、描かれた時代背景や技法などをわかりやすく解説して名画を読み解いていきます。

特に面白いのは、10つのテーマで名画を比較して解説しているところです。

『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた』と比較して、お好みの方を選ぶと良いと思います。

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『武器になる知的教養 西洋美術鑑賞』

著者の秋元雄史氏は、金沢21世紀美術館の元館長でベネッセアートサイト直島の立ち上げに関わったことでも知られている方です。
現在は東京藝術大学大学美術館館長・教授をされております。(2020年4月現在)

『武器になる知的教養 西洋美術鑑賞』

この本では、ルネサンスから現代アートまでの西洋美術で押さえるべき作品23点を厳選しています。

23点の作品ごとに、鑑賞のポイントを「技法や色彩、モチーフ」からの視点と「制作当時の社会や思想的な背景」から視点で解説しています。

さらに、絵画鑑賞を「知的トレーニング」にする方法も紹介されています。
ここで紹介されている内容を実践すると、西洋絵画がもっと楽しめるようになります。

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『カラー版 – 近代絵画史(上) (下) 増補版』

著者の高階秀爾氏は、日本を代表する美術史研究者の1人です。
現在は大原美術館の館長をされております。(2020年4月現在)

こちらの本は、近代ヨーロッパ絵画鑑賞の入門書の名著として知られています。
1975年から改訂・増補を繰り返し、磨かれ続けております。
2017年出版の最新版では図版がカラーになりました。

この本は上巻と下巻の2冊で構成されています。

『カラー版 – 近代絵画史(上) 増補版』
『カラー版 – 近代絵画史(下) 増補版』

上巻では、近代絵画の始まりであるロマン主義から、印象派、ナビ派までを扱います。
下巻では、19世紀末の世紀末絵画から抽象絵画までを扱います。

近代絵画の流れや背景について、美術史の観点から分かりやすく解説されています。

まとめ

絵画鑑賞には予備知識が不可欠

ご紹介した本の共通点は、作品を取り巻く環境や歴史、美術史を知ることが、西洋絵画の理解につながるというところです。

絵画を観察するだけでは分からないことがたくさんあります。
予備知識を知っておくと、作品の「見どころ」や「観察のポイント」も事前に知ることができます。

特に、「オールドマスター」とよばれる近代以前のヨーロッパ絵画を鑑賞するときには、ルネサンス期に確立された絵画のジャンルや格付けや絵画に描かれているモチーフの意味づけ、ギリシャ神話やキリスト教、当時の社会規範などの知識が役に立ちます。

これらの本を読むことで、西洋絵画を理解するための「体系的」な知識を、簡単かつ効率的に身につけることができます。
体系的な知識は、西洋絵画の奥深さをさらに知ることができる「特急券」であり、「時短」にもつながります。

そして何よりも、西洋絵画鑑賞がもっと楽しめることで、美術館での体験がより充実したものになります。

この記事が、皆様のご参考になれば幸いです。

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