新版画鑑賞のおすすめ本ー入門者が簡単・効率的に鑑賞眼を磨く手引きに

書評

この記事では、「新版画」にゆかりのある画家・絵師や鑑賞のポイントを知るのにおすすめの本を紹介していきます。

新版画は、西洋的な写実的な表現を取り入れつつ、伝統的な浮世絵の技術や製法を用いて制作された木版画です。

新版画は、日本の浮世絵を洗練させた「新しい木版画」として、20世紀前半に海外を中心に高い人気を得ました。

現在でもアメリカを中心に、新版画の熱心なコレクターがおり、スティーブ・ジョブズもその1人として知られています。

そして、近年は日本でも再評価の機運が高まっています。
そのおかげで、新版画を展覧会で鑑賞できる機会が増えてきました。

今回は新版画に興味を持った方が、すぐに鑑賞に役立つ本を中心に取り上げてみました。

これらの本を読むと、新版画のすばらしい世界を楽しみ、その奥深さを探求することができます。

新版画の全体像を「読み解く」おすすめ本

はじめに、新版画の作品とともに、その誕生から発展、終焉までの歴史の流れや背景を分かりやすく解説しているのが次の本です。

『新版画作品集 ―なつかしい風景への旅』

『新版画作品集 ―なつかしい風景への旅』

著者の西山純子氏は、千葉市美術館の学芸員で、近代版画を専門とする研究者です。
日本の近代版画をテーマとする数々の展覧会を手掛け、多くの論文も寄稿しております。

『新版画作品集 ―なつかしい風景への旅』の特徴と魅力は、次の3点です。

1つめは、A4サイズの大判で、川瀬巴水、吉田博を中心に、笠松紫浪、伊東深水ら14名の代表的な作家の作品を楽しめるところです。

2つめは、新版画の魅力や時代背景も交えて、入門者向けにわかりやすく解説しているところです。

3つめは、風景を描いた作品を中心に、時間(朝・夕・夜)や天気(雨・雪)などの状況別に構成されているところです。

それぞれの作家の関心や着眼点、表現などの個性がよりわかりやすく、違いを比較して楽しむこともできます。

そして、新版画運動の中心人物ともいえる版元の渡邊庄三郎の情熱と、新版画の運命を決定づけた関東大震災や戦争との関係についても知ることができます。

『新版画作品集 ―なつかしい風景への旅』を読むと、新版画のすばらしさを実感しながら、歴史的背景や鑑賞のポイントも理解できます。

新版画を知る最初の1冊としておすすめです。

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新版画を代表する画家・絵師のおすすめ本

次は、画家・絵師ごとにまとめられたおすすめ本をご紹介します。
比較的リーズナブルに入手しやすい本を中心に紹介していきます。

川瀬巴水のおすすめ本

川瀬巴水は、情感あふれるすばらしい風景版画が印象的な絵師です。
その作風から、川瀬巴水は「昭和の広重」と呼ばれることもあります。

海外では、葛飾北斎、歌川広重と並ぶ優れた風景版画絵師として、”3H”(Hokusai, Hiroshige, Hasui)の1人として紹介されることもあります。
そしてスティーブ・ジョブズも、川瀬巴水の作品のコレクターだったといわれています。

ここでは、大田区立郷土博物館で学芸員を長年お勤めになった清水久男氏による作品集をご紹介します。
大田区立郷土博物館は、多くの川瀬巴水の作品を所蔵する館としても知られており、展覧会も手掛けています。

『川瀬巴水作品集 増補改訂版』

『川瀬巴水作品集 増補改訂版』

『川瀬巴水作品集 増補改訂版』は、2013年の初版以来11刷を重ねた川瀬巴水の入門編として定番の作品集です。

この本は、約370点の作品が掲載されており、川瀬巴水の主要作品がほぼ網羅されています。

旅を愛した川瀬巴水は、同じ鏑木清方門下の伊東深水から「旅情詩人」とも言われました。
そのような川瀬巴水の情緒豊かな作品から、懐かしさを感じるかもしれません。

日本の原風景としての魅力も再発見できます。

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吉田博のおすすめ本

吉田博は、洋画の制作技術を土台とした画家です。
伝統的な浮世絵木版画制作技術に洋画のエッセンスを加えた、オリジナリティの高い作品を残しています。

吉田博は、山と旅をこよなく愛した画家で、現地で写生したスケッチを基にして作品を制作しました。

ここでは吉田博の研究の第一人者である安永幸一氏による作品集と評伝をご紹介します。

『吉田博作品集』
『山と水の画家吉田博』

『吉田博作品集』

『吉田博作品集』には、水彩画と油彩画、木版画の作品約140点が掲載されています。
年代順に構成されているので、吉田博の画業の変遷を時系列に知ることができます。

特に、登山家からの視点で見た風景版画は圧巻です。

朝夕の空や雲の表現、水面での光の反射の表現のすばらしさを感じることができます。
また水彩画や油彩画と木版画の表現の相違点も楽しむことができます。

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『山と水の画家吉田博』

吉田博は繊細な観察眼に加え、反骨精神と謙虚さを併せ持った魅力的な人物でもあります。

例えば、

  • アメリカでの仕事の取り方や交渉力
  • 国内の近代洋画壇に対する反骨精神
  • 大自然に対する敬意と謙虚さ

のエピソードからも、吉田博の人間的な魅力にふれることができます。

アーティストのセルフプロデュース力についても、学びが得られる一冊です。

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小原古邨のおすすめ本

小原古邨は、日本画の制作技術を土台とし、花鳥画を得意とした絵師です。

小原古邨の花鳥版画は、西洋絵画の要素を取り入れつつも、優美で繊細な表現が特徴です。
柔らかい作風は親しみやすさを感じます。
小原古邨は海外で高い人気を博し、日本でも再評価されている作家の一人です。

ここでは、2つの本をご紹介していきます。
『小原古邨 花咲き鳥歌う紙上の楽園』
『小さな命のきらめく瞬間 小原古邨の小宇宙(ミクロコスモス)』

『小原古邨 花咲き鳥歌う紙上の楽園』

この本は、浮世絵で知られる太田記念美術館の学芸員 日野原健司氏が執筆しています。

2019年に太田記念美術館で開催された展覧会図録兼書籍として出版されました。
B5サイズで、約150点の木版画作品が掲載されています。

解説が豊富なので、情報量を重視する方におすすめします。

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『小さな命のきらめく瞬間 小原古邨の小宇宙(ミクロコスモス)』

この本は、美術史家で国際浮世絵学会理事の小池満紀子氏が執筆しています。

日本初の小原古邨作品集として、2018年に出版されました。
この作品集の特徴は、高品質で知られる原安三郎コレクションの写真が掲載されているところです。

先程ご紹介した本と比べると、ボリュームは少なめです。
しかし拡大図を多用し、色合いが美しいので、視覚的な優しさを感じます。

こちらの本は、雰囲気を重視する方におすすめします。

最後に

浮世絵と西洋絵画の要素が融合された新版画は、外国人だけでなく日本人にとっても魅力的です。

新版画は、日本でも再評価されて、近年人気が高まっています。

また近年のアニメーションの風景は、新版画の風景を思い起こします。
デジタルアートとの共通性などから、多くのクリエーターからも注目されています。

ご紹介した本は、新版画を理解するための「体系的」な知識を、簡単かつ効率的に身につけることができます。

新版画の背景知識を知ることによって、作品の「見どころ」や「観察のポイント」といった勘所もつかめます。

さらにデジタルアートの表現力に磨きをかけたい方、日本文化に関心のある外国人とのコミュニケーションにも役に立ちます。

そして新版画の鑑賞に、新たな驚きと感動を与えていくでしょう。

この記事が、皆様のご参考になれば幸いです。

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