【感想】映画『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』:学芸員志望の方へおすすめ

【感想】映画『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』:学芸員志望の方へおすすめ 美術館・博物館

主役は名画でなく美術館のスタッフ

映画『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』は、ドキュメンタリー映画で定評のある、巨匠フレデリック・ワイズマン監督による作品です。

このドキュメンタリーは、イギリスの国立博物館、ナショナル・ギャラリーが題材です。
また構想に30年間を要したこの作品は、3時間を超える長編になっております。

私がこの映画に興味を持ったきっかけは、2020年の春から秋にかけて国立西洋美術館(東京展)と国立国際美術館(大阪展)で開催される特別展「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」でした。

特別展「ロンドン・ナショナル・ギャラリー」予習と復習に最適なコンテンツではない

結論から言うと、 映画『ナショナルギャラリー 英国の至宝』は、特別展「ロンドン・ナショナル・ギャラリー」の予習や復習に最適なコンテンツとはいえないと思います。

なぜならこの映画の主役は、ナショナル・ギャラリーの所属作品ではなく、美術館のスタッフであるように思えるからです。

なので、いくら美術ファンでも、名画鑑賞だけを目的に3時間を超える大作を視聴するのは難しいのではないかと思います。

もちろん、ナショナルギャラリーの美術館の館内の様子や傑作の数々をスクリーンを通じて楽しむことができると思います。

しかし、私があえてこの映画をご紹介する理由は、ナショナル・ギャラリーに所蔵されている傑作の鑑賞とは異なる角度での楽しみ方(あるいは学び方)があることをお伝えしたいからです。

オススメするのは美術館や博物館での仕事に興味のある方

私が最もオススメするのは美術館や博物館での仕事に興味のある方です。
特に、学芸員を目指している方、美術館や博物館でボランティア活動に興味のある方です。

冒頭にお伝えしました通り、この映画の主役はナショナル・ギャラリーの所蔵する素晴らしい作品ではなく美術館で働いている人々です。

映画『ナショナルギャラリー 英国の至宝』では、美術館で働いているスタッフが、マネージメントや調査研究、教育普及、保存修復、施設管理など、それぞれの立場で、プライドを持って仕事をしている様子が描かれております。

見どころは教育普及活動に携わるエデュケーター

私が思うこの映画の見所の1つに、美術館が来館者向けの教育普及プログラムを実施しているシーンがあります。

その中で強く気になったところは、教育普及プログラムに関わる担当者が行うワークショップやギャラリートーク、ツアーガイドにおける来館者とのコミュニケーションです。

例えば、エデュケーターが作品を前にして、来館者に向かって語りかける話の内容はもちろん、間のとり方、参加者に問いかける内容とタイミングなどです。

さらに、エデュケーターのジェスチャーや来館者の反応、表情の変化から、非言語的なメッセージと雰囲気を感じ取ることができます。

これは動画ならではのメリットです。

もちろん、時間の関係で全貌を知ることはできませんが、ワンポイントで切り取られている内容からでも、情報収集をすることができます。

また、日本の美術館や博物館は、予算や人員などの制約などから、ギャラリートークやワークショップの開催頻度が少ないため、参加する機会に恵まれないのが実情です。しかも大都市の美術館や博物館に行かなければいけないという制約もあります。

この映画を通じて、美術館や博物館で現役のエデュケーターが実践しているコミュニケーションスキルをうかがい知ることができると思います。

視聴は等倍がオススメ

ドキュメンタリーの内容を短時間で俯瞰するには、倍速再生で日本語字幕を見る方法があります。
しかし、エデュケーターがどのようにコミュニケーションを取っているのか、機転を効かせているのかといった非言語メッセージを効果的に得るためには、等倍再生での視聴をオススメいたします。

その他の見どころは学芸員の熱い議論

またこの映画では、エデュケーターと来館者とのコミュニケーションの他にも見どころがあります。

学芸員の展示に対する熱い議論も作品にしっかり収められています。

例えば、展示室での会話の場面では、

  • 制作された当時と現在の違いを考慮する必要性
  • 設置場所で光の当たり方が違う。
  • 他の展示作品とのバランスや物語性、
  • 来館者の視線

などについて、学芸員らが熱いディスカッションをしている様子も収められています。

あと意外に思ったのは、キャプションが意外と目立っていたように感じたことです。
美術系の展示では、作品そのものに集中して欲しいという想いから、キャプションは必要最低限にする傾向があると聞いたことがあったためです。
(実際にロンドンのナショナル・ギャラリーを訪れたことがないので)実際に館内でキャプションを見ると、また違う印象を持つかもしれません…

番外編:インバウンド観光関係者の活用ツールにも

意外な使い方としては、インバウンド観光に関わる方がトーク力をアップさせるツールになる可能性もあります。
例えば、文化財や美術作品などを外国人に説明するためのトークに応用できるかもしれません。
エデュケーターの鋭い着眼点と高いコミュニケーション能力は、知的好奇心を求める観光客を満足させるために必要な共通要素だと思います。

注意:コンテンツは英語音声・日本語字幕です。

私は本作品をU-NEXT(ビデオ・オン・デマンドサービス)で視聴しました。コンテンツは英語音声・日本語字幕です。

ナショナル・ギャラリー 英国の至宝 (U-NEXT)

私が調べた限りでは、 国内で流通しているDVDやブルーレイ(Blu-ray)ディスクも英語音声・日本語字幕の組み合わせのようです。

ナショナル・ギャラリー 英国の至宝 (DVD, Blu-ray)

輸入盤のDVDは英語音声・英語字幕です。英語字幕が必要な場合は、選択肢として検討してみてください。
(その場合は、購入前にお手持ちの機器が再生可能かをご確認ください。)

最後に

映画『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』は、学芸員になるために必要な博物館学課程の単位取得を目指している方、美術館や博物館、観光スポットでボランティア活動に関わりたいと考えている方々が、さらに活躍するために必要なヒントが得られる作品であると確信しております。

それと同時に、ギャラリートークやワークショップに参加されている来館者の方の知性がスクリーンの向こうから伝わって来ました。

この映画を通じて、深いレベルで美術鑑賞を楽しめるように、もっと勉強していきたいと思いました。