こんにちは。
今回は、東京国立博物館で開催されている「出雲と大和展」を鑑賞した感想を書いていきます。
「出雲と大和展」は古代日本を治める主役が出雲から大和へ移動していく様子を貴重な文化財などを使って表現した特別展です。
チェックイン後、『日本書紀』をどのように「モノ」で表現するのかなと思いつつ、会場になっている平成館のエスカレーターに乗りながら思いを巡らせておりました。
出雲大社は巨大建造物
最初のセクションは出雲大社です。
まず目を引くのは出雲大社境内で出土した3本1組の柱です。
オリジナルの出雲大社の柱が実寸間隔で再現されております。その後に平安時代の出雲大社本殿を再現した10分の1スケールの模型があります。在りし日の出雲大社の巨大さを体験することができます。
そして寄進された鎧や太刀などは、古代から室町時代、江戸時代を経て今に至るまで、出雲大社が崇敬を集め続けてきたことを物語っています。
出雲地方は日本海沿岸の先進地域だった
2つめのセクションで目を引いたのは、展示ケース一面に並ぶ多量の銅矛と銅剣、銅鐸(どうたく)です。
出雲地方が日本海沿岸の先進地域だったことを示すシンボルです。
ガラス製の勾玉や管玉(くだたま)は神々の世界の表現とともに、海外との交易を示すエビデンスでもあります。
動力源がなかった当時、対馬海流は朝鮮半島や北九州、北陸地方との日本海沿岸の交易に役立っていたようです。
パネルの「青銅器のクニ」という文言が印象に残りました。
銅鏡はヤマト王権支配のシンボル
3つめのセクションで目を引いたのは、展示室の中央にある銅鏡です。
展示ケースの中には画文帯神獣鏡と33面の三角縁神獣鏡が並べられております。
前方後円墳とともにヤマト王権の政治権力を示す象徴の1つですね。
そしてヤマト王権と海外のつながりを示すエビデンスとして、百済王から倭王に贈られたと推測されている「七支刀」も展示されてます。銘文をぜひご確認下さい。
パネルやキャプションには、邪馬台国のことは明確に説明しておりませんでしたが、銅鏡の銘文にある「景初3年」(239年)の説明から 「邪馬台国畿内説」を暗黙の前提としていたかもしれません。
仏教国家と出雲のローカル化
最後のセクションのシンボルは仏像です。
唐招提寺の四天王像(うち広目天立像と多聞天立像の2つが本展に出品)が特に印象に残りました。
奈良の仏像の方が、出雲の仏像よりもさらに美しく力強い存在のように感じました。
仏教が伝来した飛鳥時代、国家と深く結びついた奈良時代以降の中心地は大和で、出雲はローカルになったことを暗示しているようです。
藤ノ木古墳出土品の金銅製工芸品は必見
企画担当者の意図と異なるかもしれませんが、個人的に一番印象に残ったのは、(今回の展覧会のメインテーマから外れるかもしれない)藤ノ木古墳から出土した金銅製の馬具でした。
ルーペでの鑑賞がおすすめです
国宝に指定されているこの金銅工芸品には、象や龍、鳳凰などの透かし彫りの文様が施され、装飾の美しさと細かさが印象的です。
現存する当時の東アジアの金属工芸品で随一ともいわれており必見です。ぜひルーペを通じてその文様の精巧さや美しさを堪能してください。強くおすすめします。
編集の面白さを実感
この鑑賞を通じて、邪馬台国の所在地から神武東征の真偽、ヤマト王権の成立などの謎はますます深まりましたが、貴重な文化財を通じて歴史ロマンを楽しむよい機会になりました。
そして『日本書紀』の「幽」(=神々の世界)と「顕」(=政治の世界)について、青銅器や銅鏡、仏像などを通じて表現したその発想と表現力にも脱帽しました。
「出雲と大和展」は出雲や古代史にご興味のある方には、特におすすめします。会期は3月8日までですのでぜひお早めにご鑑賞ください。
またこの展覧会をもっと楽しむために予備知識を蓄えたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。